「なあスペイン」
「どうしたん?」

「スペインが大西洋のど真ん中で小船に乗ってるとするだろ」
「一人で?ロマーノはおらんの?」

「その小船は木製でな、隅の方が腐りかかってるんだ。超脆いやつ」
「なんやのそれ、危ないやん」

「いいから黙って聞け。それでな、船底がギシギシ鳴って、今にも壊れそうなんだ。でもあと一人分くらいなら、かろうじて持ちそうだ」
「へーそうなん」

「そんな小船に乗ったお前は、海に浮かぶヴェネチアーノと俺を発見する。二人とも衰弱しきってて今にも力尽きそうな感じだ」
「ええー大丈夫なん?」

「お前の小船はあと一人だけ乗せられる。ヴェネチアーノと俺、どっちを助ける?」
「・・・意地悪な問いかけやわ・・・親分泣くで・・・」

「どっちだよ、正直に言えコノヤロー」
「そうやなあ・・・」

「・・・・・・」
「うーん」

「・・・・・・・・・」
「えーっとなあ」

「・・・・・・・・・・・・まだかよ」
「こんな難しい問いかけせんといてやあ・・・親分一生懸命考えてるんやからせかさんといて」

「さっさと答えろよ」
「・・・イタちゃんかなあ」

「!・・・そ、そそそうかよ。ま、ままあそうだろうな。あいつの方がお気に入りだもんな。全然ショックなんか受けてねーよちくしょうが!スペインのア」
「そんでな、俺が降りんねん」

「は?・・・まさかお前、俺ガ降リテ二人ヲ助ケルネン〜、とか気持ち悪ぃーこと言わないだろうな」
「言わへんよ」

「じゃあもう一人分どうするんだよ」
「知らんよ」

「・・・」
「その1、ロマーノはイタちゃんと俺を見殺しにはできひん。その2、イタちゃんはロマーノと俺を見殺しにはできひん。その3、俺はイタちゃんとロマーノを見殺しにはできひん」

「そこからどうやってヴェネチアーノになるんだ」
「力づくでも二人とも乗せよ思ったんやけど、俺がいなくなったらロマーノが生きていけんよなあ、って」

「な、なに勝手なこと言ってんだ!」
「でも、本当のことやろ?」

「・・・ふんっ」
「俺もや。俺もロマーノがおれへんようになったら生きていかれへん。愛してんねん」

「・・・」
「ロマーノ、トマトみたいに真っ赤やで」

「うううるさいぞちくしょうが!」
「誰か欠けなくちゃいけない状況なら、二人で欠けたらええよ。イタちゃんはわんわん泣くやろし、自分がおりるって聞かないやろうけど、問いかけされたんは俺やから運が悪かったと思て助かってや」

「運がいいのか悪いのか分からないぞコノヤロー」
「アハハ、そうやな。暗い海の底に沈んで、息が途切れるその瞬間まで抱きしめ合って・・・キスもしよな。けど、今は」

「?」
「こんな意地悪な問いかけしたロマーノにお仕置きせんといかんよなあ」

「はあ?ちょ・・・やめろよスペイン!真昼間だぞっ・・・や・・・」
「いやや言わんといてロマーノ・・・あんまり暴れたら怪我すんねんで。いい子やから、大人しく啼いとって」



20100701